これまで透明クリア(艶あり)と艶消しクリアの水性ウレタンニスを試してきたが
どうやら艶消しニスは艶消し材が白く残ってしまうので使うのを止めた。
※手持ちのニスが古く傷んでいるという可能性が高い
今回からは艶ありの透明クリアを「いかに上手に塗るか」というところにこだわっていきたい。
これまでの実験にて下地研磨は次に気をつける必要があった。
前者は粗目でガッツリ削ればある程度フラットになるのだが、後者はどのようなタイミングでそうなるのかイマイチわかっていない。
研磨が終わりステイン>サンディングシーラー>ニスの作業中のどこかで筋が浮いてくる。
とりあえずは前回と同様、下地の研磨をしっかり行う。
まだ何も行っていない状態
汚れと木材の節が確認できる(汚れは墨汁をこぼしたもの)
前回はこの節が後から盛り上がってきていたのでここのニスが剥がれてしまうという状況があった。
濡れ布巾で拭きながら#80で1回目
2回目#80
やはり触ると年輪沿いにかすかに凸凹になっている気がする。
サンディングの限界はここなのだろうか。
どこかのBLOGで何度やっても無限に出てくるのである程度のところで止めると書いてあった気がする。
3回目#80
やはりだめだ。非常に僅かだがこの年輪に沿って凸凹している感覚を得る。
これ以上は無意味だと考え#120へ移行する。
4回目 #120
削った直後は触った感触が良いのだが、濡れ布巾で拭く度に筋が盛り上がってくる。
なら濡れ布巾を使わなければよいのでは?という簡単な問題ではない。
なぜならどのみちステインやシーラーに水分が含まれているからだ。
5回目 #180
筋は諦めて表面の美しさだけ考える。#180で研磨した。
電動サンダーによる研磨はここまで。
写真ではまったくわからないが、やはり180番ぐらいから木材の表面の美しさを感じる。
またここで水拭きをしないようにした。
というわけで**「下地研磨には限界がある」**という認識とする。
こちらも別のサイトにて筋は何度研磨しても浮いてくるという情報を読んだことがある。
つまりここ以降はシーラーやニスで分厚く層を作り何度もサンディングで均一にすることにより凸凹を埋めていかなければならないと考える。
恐らく車やフィギュアの塗装と違う難しさが筋が浮いてくる問題だろう。
まずは紙ヤスリ#240で研磨してから墨汁をぬりたくる。
塗る前は触っても凹凸を感じないのだが...
節の部分にある穴にはステインが入っていないが、概ねいつもどおり。
触ってみるとやはりザラザラして凹凸が出てきているのがわかる。
通常はやらない作業だがここで#240にて削ることで「どこが盛り上がっているか」がわかるはずだ。
やってみよう。
ほらね。
まず年輪にそって盛り上がっているのと、節のステインが先に落ちるのは想定通り。
しかし不思議なことに中央は割と削れない。
実は前回も中央だけ削れなかったという経験があり
これは木が僅かに内側に巻いてきているのでは?と考えた。
どちらにせよ対策はない。
ステインは層を作らないのでここで削り続けても下地研磨の延長線上になるだけである。
というわけでシーラーまで凹凸の発生は無視する。
塗り2回目
光の加減もあるが、どうも白い部分が。
ウェスが汚れている可能性が高い(ニスか削りカスが付いている)
一旦ウェスを洗浄。
塗り3回目
若干塗りムラがあるのでもう一回
塗り4回目
やはり白っぽくなってしまった。
原因不明だが致命傷というわけではないので続行。
乾燥後
仕上がりは良い
#400は一緒だが消しゴムぐらいのスポンジで繊維にそって縦に。
角を攻めないように。
1回目とくらべて筋が際立っているのがわかる。
こちら研磨後。
筋に沿って研磨できてない箇所が明らか。
また色がうっすら剥げている箇所もあるような。
色ハゲが怖いのでここでもう一度ステインを入れる。
まだニスは塗ってはないので乗るはず。
乾燥後。結構きれい。僅かにザラザラしている。
先程研磨したのを忘れていてさらに磨いたのち塗布した。とりあえず剥がれなどは無い。
こちらのサイトではシーラーを3回「以上」が鏡面仕上げとされている。5回ぐらい塗って見ようかな。
乾燥後。木くずの入ったゴミ袋に落下させてしまったのでティッシュで乾拭きしたのだが...
落としたときではなく拭いた時にキズがついた。恐らく指(爪?)だけで付いている。
これだけみるとシーラーがどれだけ弱いコーティング力かがわかる。
それほど深いキズではないと思われるため削ってしまえばあまり問題ではないだろう。
木の繊維で凹凸があるのが光の加減でわかるがそちらのほうが懸念点。
また、削った粉がもともとツブツブに空いている木の凸凹(削りでは対応できない深さ)に溜まっているのが見える。
研磨後。まだ筋に沿って削りきれていないのがわかるので凹凸があるが
画像中央はかなりフラットになってきている。なんとなくゴールが見え初めた瞬間。
1時間乾燥後に墨汁を重ねてもう少し乾燥。
研磨
3回目のヤスリと思うとフラットな部分が広がってきているようにみえる。
あと1,2回といったところか...
研磨
そろそろ違いがわからなくなってきた。
一応もう一度塗っていく。
研磨後の写真は削った後の粉を指ではらってみた。
これ以上フラットにはなないのか?
割としっかり削っているおかげかシーラーのざらつきがすごく少ない。前回はざらざらした感じが残っていたはず。
そして400番の紙ヤスリをかけると...
おもわず「おー」と言ってしまった。
面がほぼフラットになっている。
鏡面仕上げのスタートラインはここか。
何度も塗り重ねてよかった。
木材の凹凸を埋める役割はシーラーで行うべきか、ニスで行うべきか。
ここまでの流れだとシーラーで埋めたことになるわけだが...
和信ペイントの公式サイトのシーラーの解説にて「平滑性」というワードがでてくる。
肉持ち感 (塗膜の厚み感) がつきにくい水性系ニスで仕上げる際に、下塗りとして使用することで肉持ち感と平滑性をよくします。 導管部への流れ込み性と研磨性に優れているため、表面を平滑にしやすく、上塗りをした際の仕上がりを向上させます。
平滑性という言葉をあまり耳にしたことがないが、
物の表面が平らで滑らかである性質のことを指す表現。
また「平滑」とは
[名・形動]平らでなめらかなこと。また、そのさま。「平滑な表面」
とのこと。なるほど。つまり
と個人的に認識にした(初めは単なるのテストで厚塗りしてただけ)
しかし重要なのは少し前でも書いたが「表面をティッシュでこすっただけで引っかき傷がついた」という点から
かなり柔らかい層であることがわかる。
あくまで仕上がりの強度はニスの厚みが必要と考えられるのでどちらにせよここからニスを厚塗せねばならない。
今回はわかりやすいように初めから丁寧に細かくヤスリをかけたが
物理的に凸凹の凹方にたくさん液体が入って固まるわけで毎回丁寧にやすりを掛けなくとも勝手に凹凸の差は縮まると思う。
ヤスリのかけすぎはご存知の通り無駄に木材(ステイン)を削ってしまう可能性も高い。
多くのニス塗りメンが言うようにやすりはさらっと慣らす程度でOKで、7回の上塗りが終わったあたりで平滑になっているかテストするのがやはり正解かもしれない。
※公式サイトではシーラーは2時間の乾燥、ニスは90分の乾燥が推奨されており、ニスのほうが僅かに効率が良い?
とにかく平滑になったのでニス塗りにシフトする。
こちらも和信ペイントのものを使用。
前回の失敗から透明クリア、つまり艶ありを使っていく。
ニスを塗った時に**「水弾き」のような現象が起こった場合**、私の経験から恐らく「ニスの薄めすぎ」が原因かと思う。
このまま乾かしてしまうと本当に弾いている箇所にニスが乗っていない状態が発生する(無駄に凸凹になる)
ニスが弾いている状態になったら焦らなくてOKなので次を守る。
「ニスは塗っている最中にもごくごく僅かに乾燥し始めている」※これは水性だが、油性ニスにおいてハケの痕を見ていると実感できる
という実体験から本当はあまり良くないが何度もハケを前後させてやれば弾いている箇所にも次第にニスがのってくるはずだ。
ムラができるのでは?と思うがそもそも水分が多いほどハケのムラも出来にくいのであまり心配しなくても大丈夫。
ただし写真のように端から端を一筆で塗る感覚を忘れないように。
12時間ほど乾燥
これまた「おー」と声が出た。
これまでにない美しい輝き。
たしかに刷毛の痕は多少残っているが、表面が平滑になっているため艶の質感が以前塗ったときよりも断然美しい。
シーラーの厚塗りのおかげだ。
まだニスは1回目なのでこれで完成とはいかないが。
例のごとく400で研磨。
ここからはあまり深追いせずさらりと。
さすがにコーティング力がシーラーとは違うので削り難さを感じる。
比較的良さげだが、中央の削れが悪い。
これは木材の筋ではなく純粋に木材が中央に僅かに曲がっているということか。
このあたりが埋まるかどうかも今後の塗り次第。
乾燥は5時間ほど。
うーんツヤツヤ。
これはこれでいいんだよなぁ。
ただ、ピアノみたいな輝きか?と言われたらなんかちがう。軽そうな輝き。
市販のニスの限界だろうか?
研磨してもツヤを維持。
分かりやすく写り込ませてみた。
ツヤツヤである。
すこしここでやり方を変えて800で水研ぎしてみる。
というのも僅かに400のキズが見えるので。
うーん。中央はいい感じではあるが、それでもまだ木目に沿って線が残る。
これはもう少し深めに削ってからが勝負なので今は層を重ねて削る余裕を作るステップだと割り切る。
画面中央の傷は結構前から付いていたものっぽい。
攻めれば全体を白くできるか?
まだ先は長いといった感じ。特別違いは感じない。
徐々に乾燥後の艶がましているような?
車の後部座席のスモーク済みのマドをそとから除いたような艶(わかりにくい?)
こちらも400>800で研磨。
まだ面は出ていない。
乾燥後はそれほど変わらないが
400で細かく削ったところ面が出た!
800で水研ぎ
真っ白になっているがニスがハゲているわけではない。ニスがハゲていると黒もハゲる。
一部の木の小さな穴を除けば完全にフラットになっている。
やはりシーラーもニスも7回目前後に差が現れるのだろうか?
ここで完成にしてもよさそうだがここで上塗りするとどうなるかをもう一度みるために上塗り。
まる一日以上乾燥させた。2日かな?
7回の塗りは鏡面の一つの境界線かも。
すでに美しいが埃や泡が固まっているのでここをフィニッシュとするのは賛否ありそうだ。
この光の加減で見える中央の白い横線は上で「再ステイン」と書いたあたりで筋が浮いてきてしまった箇所が削られすぎてハゲた箇所。
ステインしたつもりだったがその後のシーラー後の削りで再びけずれてしまったようだ。ニスの上塗りですでに下の層に入ってフラットになっているので作業的には問題無い。
こういうムラは注意したい。
さて、せっかくの実験なので研磨でどこまで詰めれるかを調べる。
すでに6回目で平面が出ているので最初から800でいく
想定通り!
きれいに平面がでた。
ここからは倍にしない
角はどうしても攻めれないのでこんなもんで。
残念ながら左上にすこし引っかき傷をつくってしまった。
爪で軽くひっかくだけでキズがつくのでそれがウレタンニスの限界だろう。
ここからコンパウンド。
車の動画とかをみていると2000を経由するので本気でやるなら買っておいても良いかも?
一気に美しくなる。
更に美しくなるのが実感できるが、9800でもう1段美しくできる。
左側の細かい白い点はティッシュの粉。
かなりの美しさ。写真だと差がわからないが、人の目で見るとはっきりわかる。
ここまでくるとタオルでこするだけで油膜が乗る。
油膜が出てしまうのでメガネ拭きのようなものでこすりたいところだが見つからなかったのでティッシュ+ガラスクリーナーで清掃。
ライトの明かりが当たると凸凹がほぼ無いことがわかる。
美しいのは確かなのだけれど、塗りっぱなしと思うと少し曇った艶となっている。
恐らく下地についた紙やすりの小キズが僅かながら独特の艶消しの効果を出しているのではと思われる。
車の鏡面を出す動画でも言及しされているように、ここまでやるとすぐに小キズが付くのでメンテナンスが大変だそうだ。
またどうしても角を攻めると塗装がおちてしまうので上の画像のようにヤスリできない箇所にムラが残る。
広い面を磨く場合はあまり気にならないかもしれないが、ここまで磨くのが100点の回答とは言えないと感じた。
ニス塗りで言えば塗りっぱなしをフィニッシュとするバイオリン作家が居たと思うが、そういうことだろう。
ここまでやってきて鏡面と言えるかはわからないが、面をフラットにさえすれば素人にもできることがわかった。
しかしやはりキズや仕上げが攻めきれない箇所等デメリットもいくつか残っているように思う。
というわけで個人的なまとめ。
無垢材研磨は無限に筋が浮いてくるのである程度のところで諦める
シーラーだけでも7回塗ればかなりフラットな面が出る
ニス後も気を抜かず400でフラットになるまで塗り+研磨(おおよそ6回塗り)
フラットになったらもう一回塗る(7回目)
あえて紙ヤスリをスキップしてコンパウンド3000~9800で仕上げる
これがベストかなと思う。
最初の写真からこの記事を書くまで9日かかっている。
塗りはトータルで14回となった。
一つ一つの作業時間は短いが大きな作品となると鏡面は相当大変だろう。
鏡面にしすぎてもよろしくない箇所がでてくるので
「塗りすぎない」「鏡面を求めすぎない」というような妥協点も作る側のスキルになると思う。
BLOG記事としては鏡面仕上げっぽい結びにできて何よりだ。
5回に渡る実験もひとまず終了。
さて、フィギュアケースでも作ってみようかなと思うのだがどこまで塗りを攻めるか。
難しいところである。