2023-01-30

布の物性プロパティを調整してみよう(Physical Property)【Marvelous Designer】

布の硬さや重さといった値を自由に調整して思い通りの布にして物理演算をする。

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使用ソフトウェアバージョン備考
Marvelous Designer12(7.1.143)英語版

布のシミュレーション設定についてはわかってないことが多く、調査中である。

情報が不正確である可能性に注意。

Physical Propertyとは

日本語:物性

Fabricウィンドウから布を選択すると、そのプロパティエディターの中にある設定。

プロパティ外観

ここの設定は布素材それぞれに対して物理演算に影響する。

つまりこれを変更することで自分のお好みの布にしてしまおうという記事。

プリセットがいくつも選べるので、特別こだわりがなければここから選んでしまうのが楽。

この記事ではより深く個別の設定を見ていく。

Stretch-Weft, Stretch-Warp

日本語:よこ糸の強度、たて糸の強度

英語で布の縦糸をWarp、横糸をWeftと呼ぶ。

ここでは縦と横の強度を別々で設定できる。

実際の布は横に伸びやすく、縦に伸びにくいという性質を持っている。

Stretch-Weft(よこ糸の強度)を使って例をだす。

まず次のシーンを作成した。

最初のシーン

フリーズした布に縫い付けたカーテンのような布。端をピンで引っ張っている。

数値0がいちばん弱くなるので

横に伸びた

横方向に大きく伸びて、ダラっと垂れる。

数値を100にすると伸びにくくなりゴワゴワなイメージになる。

シワシワ

上は演算が安定してこの状態。演算中に空中でシワになっているわけではない。

いつ使う?

しなやかで美しいイメージなら柔らかく、ゴワゴワした布を再現したい場合はこの値を上げると良い?

上げ過ぎるとぐちゃぐちゃになるようなので注意する。

裁縫一般で布の織り目のことを「地の目」と呼び、リアル布は縦と横で伸縮性が違う。

ただ、そもそもどっちが縦?といった話などは別サイトに譲る。

斜め方向(バイアス方向)が最も伸びやすいという性質はシミュレーションにも関わってくるので覚えておくと良いかも。

Shear(Right, Left)

日本語:バイアスの強度(右, 左)

バイアスとは布に対して斜め方向のことを言う(洋裁用語)

つまり斜めの強度を変更する。

斜めってどっち?

2Dウィンドウでラインを引いた方向がそのまま上下左右になっている。

上下左右

この2Dウィンドウで見て「斜め」と同じ方向がバイアス。

ちなみに上下がタテ、左右がヨコ。

次のように布を地面に平行に吊るした例。

吊るした布

四隅をピンして演算したので重力で垂れ下がっている(Searは両方とも0に設定)

Shear (Right)(バイアスの強度(右))を99にして演算する

なぜかこれは数値を100にできない。仕様?

右上にむかって張る

右上方向に布が張るようになる。

(右)とはこちらの方向に布がつよくなるようだ。

逆に(左)を99にすると右下から左上に張りが行くようになる。

左上にむかって張る

両方とも99にすると

両方99

バツを描くような形になる。

いつ使う?

この値はどういう時に有用かはよくわかっていない。

斜め方向に強い布は不自然になるので、この値を上げる場合は注意して使ったほうが良いだろう。

Bending (Weft, Warp)

日本語:曲げ強度(よこ糸, たて糸)

これは布がアーチ状に曲げる時の強度。

言い換えれば数値を上げることでシワが出来にくくなる。

数値80Strengthen(強化)と同じ効果が出るらしい(未確認)

バイアス方向のBending-Bias(曲げ強度-バイアス)の設定もある。

斜め方向に対して同じ効果だと思われるので省略する。

Freezeされた板の縁に縫い付けた布で確認する。

板から垂れ下がった布

数値0になっているが、僅かにアーチができている。

Bending-Warp(曲げ強度(たて糸))を80にしてみると

アーチになった

曲がりにくくなったので縫合部分からのアーチができている。

逆にWeft(よこ糸)を80に強化すると

Weft 80はシワができにくく

横方向に強化されるのでシワが減る。

上の例では縦の辺で縫合されており、横はフリーなためこういう結果となっている。

縫い付ける位置等によって結果が変わるので、ヨコとタテどちらを強化すべきかは変わってくる。

おまけで両方100にすると重力に逆らって逆立ちするほど強くなる。

逆立ち

いつ使う?

これはStrengthen(強化)を常用したい布で高い値を設定するとよさそうだ。

分厚い皮のシミュレーションや、下敷きのような硬さを作りたい時は大きな数字を入れれば良い。

Strengthen(強化)を使えばいいのでは?

公式ではStrengthen(強化)はシミュレーションの一時的な補助にのみ使用することを推奨している(不本意にできてしまったシワを伸ばすなど)

つまり最終的には解除するという想定のようだ。

このBendingは強化した結果を解除しないまま最終結果として使用する時に利用するのが良いと思われる。

Buckling Ratio (Weft, Warp)

日本語:座屈率(よこ糸, たて糸)

公式の解説が難しいので以下は私のテストによる個人的見解。

調査した限りの結果だけで言えばシルエットは維持したままシワの量をコントロールするパラメタといっても良いと思う。

まずは両パラメータを0にする。

両方0

分厚いカーテンやテーブルクロスのような自然なシワができている。

両方100

両方100にしたところほとんどシワがなくなった。

カーブしているところに非常に細いシワが見て取れる。

何が起こった?

要するに布が伸縮するときに、そのサイズに追従するかどうかだろうか?

つまり「シワがなくなった = 布が固くなって伸びた」ではなく「シワがなくなった = 布が変形しやすくなった

別の例

うまく説明できないが、0に近づくほどデニムのように曲がりにくくなり100に近づけるほどシルクのようによく曲がるという表現がしっくりくる。

私はシンプルに「シワができやすいかどうか」と理解することにした。

伸びやすくなっているわけではない!

ここで重要なのが布が「伸びやすく」なっているわけではない。

なぜそう言えるかというと、柔らかくなったのであれば重力でより下にタレる動作をするはずだが、それがないからだ。

また上の例でも分かるように縫い目との接合部分の角度も変化していない点にも注意だ。

いつ使う?

これまでの設定だと値を上げると布が強化されるが、こちらは「値を高くすると柔らかくなる」という印象。

シワを減らしたい(増やしたい)が、伸び縮みの量や縫い目に変化を起きないようにする時にこの値を上げるとよいだろう。

Buckling Ratio-Bias(Left, Right)

日本語:座屈率-バイアス(右, 左)

こちらの項目は上と同じものだと思うのだが、いくつかのケースでテストしたが全くといっていいほど違いがわからなかった。

公式にも解説なし。この項目は要調査。

Buckling Stiffness (Weft, Warp)

日本語:座屈硬さ (よこ糸, たて糸)

これに関しては全く使い道がわかっていないので、実験してわかったことだけ書いておく。

まず、公式の解説によるとBending(曲げ強度)とともに使用されると書いてあるがBuckling Stiffness(座屈硬さ)を上げても何も変化が起らない。

いくつか試してわかったのは上の2つのパラメタに加えBuckling Ratio(座屈率)が上がっていないと効果がないようだ。

実験

まず上記3種が0の状態。

3種とも0

次にBending(曲げ強度)を80にすると

曲げ強度80

布が曲がりにくくなるので、縫い合わせている上部が膨らむ。

また下部も布が強くなり広がっている。

この状態でBuckling Ratio(座屈率)を100にする。

座屈率100

これは「シワが出来にくくなる」値と解説したが、上部の縫合している部分が柔らかくなった影響でタレてきており、シワはトータルで増えて見える。

しかし、よく見ると最初よりも下部が広がっている効果となっているようだ。

この状態でBuckling Stiffness(座屈硬さ)を100にしてみると

座屈硬さ100

上で縫合されている箇所の硬さが戻ってきており、上に膨らむようになった。

でっていう

たしかにシワの量と広がる量によりシルエットが微妙に違うが、具体的にどういう時に使うのかよくわかっていない。

これらの数値を目的を持って扱うのは現状の情報量ではかなり難しそうだ。

何らかの布の性質を再現したものであると予想されるため、具体例が出てくればわかってくるかもしれない。

バイアス方向もある

こちらはさらにBuckling Stiffness-Bias (Right, Left)(座屈硬さ-バイアス)があるが上と同様と思われるため省略。

Internal Damping

日本語:内部減衰

こちらの数値を上げることで布が水の中にあるようなシミュレーションになるとのこと。

しかし、こちらの数値を最高まで上げた状態で色々試してみたが違いがほとんどわからなかった。

非常に些細な変化しかもたらさない可能性が高いが、もしかするとこれまでの例のように何か他のパラメタとセットで使わないと意味がないかもしれない。

こちらも継続して調査。

Density

日本語:密度

単位(m²)面積当たりの重量比。つまり布の重さと考えても良い

こちらはかなりわかりやすい変化をする。

地面に平行に張った布。

次がDensity(密度)が0

密度0

次に100にした状態。

密度100

単純に重さが増えて下に垂れる。

いつ使う?

個人的にはリボンのような縫合部分が少ない物がくっついていると布を大きく引っ張ってしまうので軽くする(特にアニメーション)

逆に布をダラっと重みで垂らしたい時に大きくするイメージ。

外観の変化が大きく他の布にも干渉するので、あまり積極的にいじる項目ではないと思う。

Friction

日本語:摩擦係数

高くすると布がズレ落ちにくくなる。

ただし、非常に微妙な差なので数値を上げても実感しにくい (効果がないわけではない)

次の状態でシミュレーションをして、ズレ落ちる度合いを見る。

まだシミュしてない状態の布

より強くずり落ちるためにDensity100に変更。アバター側のFrictionを0に設定。

約5秒シミュレーションした結果が次。

ずり落ちた布

左が早くずり落ちているのが分かる。

つまり値が低いほうが滑りやすく、値を上げると滑りにくくなる。

布同士にも作用する

上の例ではアバターとの摩擦だったが、公式解説によると布同士でもこの値が効くとのこと。

ただ、私が試した限りこちらは更に微妙な差となった。

以上

全体的に見ると覚えておいて損はない項目がほとんどだが、あまり積極的にいじりすぎるのも危険に見える。

また理解するのが難しい項目がいくつもあるため、継続した調査が必要そうだ。

まずプリセットでいくつか選んでみて、しっくりこない時に値を調整するのが良いだろう。

全部覚えるというより、いじりたい時にこのページに戻ってきてもらえたら幸いだ。



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謎の技術研究部 (謎技研)