| 使用ソフトウェア | バージョン | 備考 |
|---|---|---|
| Marvelous Designer | 12(7.1.143) | 英語版 |
Marvelous Designerには布を硬く(柔らかく)する機能が備わっている。
実際の洋裁でも「接着芯」や「伸び止めテープ」等よく使うが、これに関する機能がいろいろ存在し、わかりにくい。
この記事で徹底解説する。
日本語:強化
3Dウィンドウで布を右クリックすることで選択できる(解除も同じ操作)
ショートカットはctrl + H
一時的に布を強化することにより曲がりにくくなったり、シワを伸ばす効果がある。
イメージ的には平面的に広がろうとする効果。
この機能は他の機能に比べて最も硬い布になる(Freezeは別物とする)
例えば次のようにシワになっている袖(まだ何もしていない)
Strengthenをかけてみると(まだシミュレーションしていない)
オレンジ色に変化した箇所がStrengthenがかかっている場所。
シミュレーションを実行すると
シワが伸びていることがわかる。
演算中に袖を引っ張ってやると
さらにシワがなくなり、平坦になる。
公式解説では、自然な重力で伸びるようなシワが演算の時に摩擦で滑り落ちてこない時に使うと良いとのこと。
逆に伸びすぎてしまった場合はStrengthenを解除した後、そのままもう一度シミュレーションすると自然なシワに戻っていく。
それ以外にも、布をシミュレーションしながら縫い合わせていく時に形状が崩れてしまってうまくできない時などに使う。
Strengthenはそもそもシミュレーションの補助用なので、常用するものではないとのこと。
ほしい形状にシワが伸びたらこの設定は解除しよう。
日本語:形状保持
3Dウィンドウで布を右クリックすることで選択できる(解除も同じ操作)
この機能はプロパティエディタからでも利用できる。
こちらはシワをシワのまま維持しようとする機能。
先程の例にもう一度適用してみる。
この状態で演算をしても何も変わらない
すこしわかりにくいので演算中にこの袖をひっぱってみると
わずかに伸びたが、シワを維持しようとする。
逆にSolidifyを解除して引っ張るとシワはもとに戻る。
パターン単位ではなくポリゴンを選択してSolidifyできる。
Select Mesh系(メッシュ選択)でメッシュの一部を選択して
右クリックから設定する。
パターンに縛られずポリゴン単位で好きな箇所をSolidifyできる。
Marvelous Designer 11から追加された機能。
公式によるとジーンズの膝裏のようなシワがデザインに織り込まれているようなものに使うとよいとのこと。
個人的にはあまり使った記憶がないが、他にもギャザーなどが演算中に一部崩れたりするのを防げるかも。
プロパティ側でも設定できる項目なので、デザイン用途でずっとONにしておいても良いかも?このあたりは要検証。
日本語:固定
3Dウィンドウで布を右クリックすることで選択できる(解除も同じ操作)
完全に布が固まる。凍ったような状態。
適用後は布が水色になる。
演算しても1ミリも動かない上に、指で引っ張っても動かない。
重力も作用しないので空中に浮いたままになる。
動かなくはなるが演算コストは消費する。
演算も軽くしたい場合はDeactivateしよう。
これは物理演算から除外されるといっても過言ではない(コリジョンや縫い目は残る)
したがって「硬く/柔らかく」という概念とは別物だと考えても良いかと思う。
あくまで一時的な補助機能。
こちらも実際の洋裁で使う物ではないので、演算が終わったら解除することを推奨。
日本語:芯
プロパティウィンドウから設定する。
恐らく本物の洋裁で「接着芯」を再現しているツールだと思われる。
接着芯とは、使用する布とは別にボンド付きの布を貼り付けて補強するもの。
実際には襟ぐりや前立て(ボタン部分の布)、カフス等に付けることが多いと思う。
布が伸びやすいところに使って補強する。
非常に柔らかいシルクの布にボタンを付けて引っ張ってみる例。
まずは何も設定していない状態。
この布にBondを適用すると
シワが減った。
このように実際の洋裁で使う場合と同じような使い方で良いと思う。
シワになってほしくない部分に使うなども良さそう。
上では最も変化が顕著な例を掲載した。
この機能、実際はかなり僅かな変化しかないため本当に布が補強されているのかわかりにくい。
よりリアルなものにするために僅かな効果を狙って使っていく物だと思われる。
Strengthenなどは使ったら解除を推奨しているが、こちらは実際の洋裁でも使うものなのでオンのままで良い(たぶん)
パターンの一部分だけをBondすることもできる。
インターナルラインで囲ってTransform Pattern(パターン変形)で囲われているインターナルラインを選択しプロパティから設定する。
日本語:漉き
日本語の読み方は「すき」
パターンを選択してプロパティエディタから設定する。
Bondとは対称的に布を柔らかく(伸びやすく)変化させる。
先程のボタンと同じ例確認する。
Skiev後
より伸びやすくなり、シワも増えた。
「漉き(すき)」というのは革細工で素材を削って薄くする加工のことだそう。
「紙を漉く」と同じ漢字でもある。
設定のPercent(比率)が低いほうが柔らかくなる。
すこしわかりにくいので注意。
日本語:伸び止めテープ
2D Windowからツールをクリックして
テープを張りたい辺をクリックすると適用される。
削除したい場合は、適用されている辺を右クリックしてDelete Seam Tape(伸び止めテープ削除)
辺のプロパティウィンドウにもSeam Tapingの項目があるのでチェックして適用もできる。
適用された箇所はオレンジ色になる。
布の縁だけ硬くする物だと理解しておいて問題ないかと思う。
本当の洋裁でも「伸び止めテープ」という商品があり、こちらも「接着芯」をテープ状にしたものとほぼ同義。
本来は肩や袖ぐり、首周りなど布が伸びてほしくない箇所に使うものだが...
使ってみるととても効果が微妙で上級者向けという印象。
こちらはBondよりも更に狭い部分にだけ適用することになるのでより一層効果がわかりにくいツールとなっている。
アニメーションでは大きく効果がでるかもしれないが、私の経験不足により未検証。
Seam Tapingを使って一番効果がわかりやすい例を掲載しておく。
布を上方向に縫い付けて、そのまま垂れさせる。
縫い目の部分にSeam Tapingをかけてみると
当然だがStrengthenやBondかけても似たような効果にはなる。
しかし上記2つだと布全体が硬くなるので、よりアーチが外に開く形状になる。
かなり微妙な違い。
上の例は布が硬くなったイメージだけの例で「伸びを防止している」というイメージはない。
私が色々試した限りでは実際の洋裁で使う目的のようなケースでシミュレーションに大きく影響するケースがなかった。
このあたりはアニメーションでの影響も含めさらなる実験が必要そう。
プロパティウィンドウのWidth(幅)からテープの幅を変更できる。
3D WindowのツールでPiping(パイピング), Binding(バインダー)というツールがある。
こちらは布の端処理で使用するツールであり布を硬くするという目的で使うものではない。
実際の洋裁でもこの機能のバイアステープ等があるが、こちらは「バイアス方向の生地」を端に重ねて処理する作業。
バイアス方向というのは斜め方向の生地になる。
そして斜めの生地は「伸びやすい」という性質を持っている。
つまり、伸び止めテープとは使用用途が違うことが分かると思う。
Bondなどの機能をオンにするとプリセットの項目が現れる。
この項目でプリセットのみならず、更にシミュレーションを詳細に設定できるが...
ほとんど違いがわからなかったため今回の記事では割愛している。
このあたりはシミュレーションプロパティと合わせて継続調査したい。
布を硬く/柔らかくするといってもいろいろな選択肢があり迷ってしまうかもしれない。
個人的には「シワがより過ぎた/布が曲がってしまった」といった時にStrengthenをよく使う。
また、一時的に布を固定して他を縫い合わせていく作業にFreezeも重要。
この2つは優先的に覚えておくと良いと思う(使ったら解除も忘れずに)
見た目の変化が少ない機能が多いので個人的にも継続して調査したい。
